この記事のポイント
課題
麹に対する「少し難易度が高そう」という心理的なハードルを下げ、日々の食卓で無理なく使える体験を目指した
AI企業を調べ、展示会にも足を運んだが、具体的な像はつかめないままだった
AI企業の多くは「型に当てはめる」提案で、小さくトライアンドエラーを重ねたい自社の段階と合わなかった
取り組み
ビジネス視点で今の状況と将来やりたいことを理解し、柔軟に提案してくれたLeapWellに依頼
レシピ生成機能の配置を3案から比較し、ギフトにレシピを添えて安心してもらうという原点に最も合う案を選定
開発では、開発チームを持たない前提で選択肢を整理し、予算・納期を踏まえて機能の優先順位をつけ、早い段階で動くプロトタイプを見せた
「またリクエストを投げたくなる」ユーザー体験(UX)をセンターピンに、両社のデザイナーも加わり開発し、成分の見せ方などLeapWellからの提案も多く、大村さんは「コクリエーションだった」と振り返る
現時点の成果と展望
社内POC(実証実験)で、販売スタッフや製造現場のメンバーが利用中。当初の想定を100点とすると「150点」の出来で、提案の質に驚かされた。
数値ではまだ語れない段階。店舗やSNSなど現場での活用フェーズへ
ギフトへのレシピ添付、人気レシピの共有、ドリンク・スイーツ・海外向け、アプリ化を構想
四角四面ではない解決が必要な、コクリエーションを求めている会社にお薦めとのこと。
クライアント概要
会社名:株式会社コラゾン
代表:代表取締役 大村智則さま
ブランド:MURO
取り組み:麹をベースにした調味料のレシピ提案AIの開発と保守
今回は、麹をベースにした調味料ブランド「MURO」を展開するコラゾン社とともに開発したレシピ提案AIについて、代表の大村さんに、依頼の背景からリリース前後の状況までを伺いました。

「こうじくんレシピ」のサービス画面
冷蔵庫に残った食材で、いつでもレシピを提案したい
菊田: プロジェクト前、どのような状態を変えたいと考えていましたか?
大村さん: お客様の間で麹の調味料の人気が徐々に上がってくるなかで、「どういう使い方をしたらいいのか」とよく聞かれていました。そこでレシピを用意するのですが、無限に用意することはできません。POPなどで2つ3つ紹介したら、もう売り場はいっぱいです。お客様にとっては、そこで紹介した料理の材料が、ちょうど自宅の冷蔵庫にない、ということもあります。
僕も料理をするので共感するのですが、実際の現場では、冷蔵庫に残っている野菜やお肉を使って何かを作りたい、というのが本心だと思います。本で紹介されているようなおしゃれなものばかりを作りたいわけではありません。一方で、麹を使えばおいしくなり、体にもよさそうだということは皆さんご存じです。それなら、いつでもどんな時でも、冷蔵庫にある材料と麹調味料でレシピを提案できればよいのではないか。そう考えたときに、AIを活用する絶好のタイミングだと思いました。
菊田: 構想は以前からあったのでしょうか?
大村さん: ChatGPTが登場した頃から考え始めていました。当初はレシピを作りたいというより、麹で砂糖を置き換えられないか、化学的な添加物を麹の調味料に置き換えられないか、といったことを検討しており、プラクティスのようなことは行っていました。
菊田: 内閣府の精密栄養のプログラムとの関わりも、きっかけになったのでしょうか?
大村さん: 内閣府の社会実装のプログラムに参加し、人それぞれに合った栄養を自分でも実際に作れるというのは、とても素晴らしいことだと、より腹落ちしました。プロジェクトは約2年半でしたが、完了に向けて、最後に次に残せるものができあがっているとよいと、途中から考えるようになりました。参画されている先生方にも相談して後押しをいただき、今回の案件につながりました。
菊田: 麹という素材には、どんな可能性を感じていますか?
大村さん: 社の成り立ちから少しお伝えしますと、社名にはスペイン語で「心」という意味を込め、ウェルビーイングに貢献しようとスタートを致しました。弊社にとっての大きな問いは、どう生活をしたら幸せを感じられるか、です。その観点では、昨今は腸脳相関などの研究報告もあり、麹は一つの重要な素材になり得ると考えています。
決め手は、ビジネス視点で事業を理解し、柔軟に提案してくれたこと
菊田: いろいろな会社から話を聞かれていたと思います。最終的な判断材料は何でしたか?
大村さん: それぞれの会社様がお持ちの型に当てはめる、というような提案が多かった印象です。一方で、大々的に物事を考える会社様もありました。当時はまだ大手が導入を検討し始めた時期で、AIをサービスに実装しようとする企業はそれほど多くありませんでした。そのため、クライアントの規模も大きかったのだと思います。
僕らはどちらかというと、トライアンドエラーを繰り返したいタイプです。お店を中心にお客様との接点を持っていますが、規模感は大手食品メーカーとはまったく違います。そうしたなかで、「それであれば、こういうことではないか」と柔軟に言っていただけたのが大きかったですね。
菊田: 柔軟さは、具体的にどういうところで感じましたか?
大村さん: 将来のスコープや、現在地がどういう状況なのかを理解したうえで、そのフェーズに合わせたソリューションを提案していただけたことです。ヒアリングとそれに対する回答の目線を、ある程度こちらに合わせていただけた、という感覚です。
菊田: 食や健康という領域への理解については、いかがでしたか?
大村さん: 食材や健康といった分野への理解を持っている人は、実はほとんどいませんでした。AIやITに関わる人たちは、食への関心があまり高くありません。問題を解決する側と、問題そのものがある業界とでは、異なる文化を持つ人たちという印象がありました。LeapWellさんは食や健康の領域にきちんと興味を持って提案してくださったので、嬉しかったです。
「またリクエストしたくなる」ユーザー体験をセンターピンに。本当にコクリエーションだった
菊田: 開発中、最も難しかった判断は何でしたか?
大村さん: スコープをどうするか、ですね。こちらとしては、あれもこれもという気持ちがあります。その中で何を優先するかを、しっかり整理していただきました。
菊田: 優先順位を決めるうえで、センターピンになったのは何でしたか?
大村さん: お客様を主体に考えた時に、また当サービスを使いたくなるようなUXになっているかを重視しました。「いいレシピだな」「ワクワクして料理をしようかな」とお客様に思っていただけて初めて、「意外と使えるな」と感じてもらえるのではないかと考えていました。
料理は、本質的にアナログな営みだと思います。「おいしい」という感覚は、その象徴です。AIはどちらかというとその対極にあるもので、ユーザー一人ひとりに満足感のある体験をどう提供できるかにこだわりました。途中からはUX専門家やグラフィックデザイナーにも入っていただき、最短の時間でより良くしていくにはどうしたらいいかを、お互いの知恵を持ち寄りながら、細部までこだわって設計しました。
菊田: 栄養面の見せ方は、どのように決めていきましたか?
大村さん: 麹を使うと、減塩の効果が大きいという特長があります。それを押し付けがましくなく、ビジュアル的にも素敵に、「そうなんだ」と伝わるようにしたいと考えていました。そこに、栄養成分を可視化できますよ、とご提案いただき、大変ありがたかったです。コクリエーション、共創活動でしたね。
菊田: レシピの中身は、どのように詰めていきましたか?
大村さん: 内閣府のプログラムの先生方にも実際に使っていただき、良いという評価をいただきました。また、男性と女性でも基準が異なるため、摂取基準については厚生労働省が出している基準を採り入れる形で詰めていきました。
想定精度を100点とすれば「150点」。食のプロも驚いた提案
菊田: 現在は、誰がどのように利用していますか?
大村さん: 10月21日にリリースを致しました。それまでは社内のメンバーや栄養士など、さまざまな人に使ってもらいながらデビューのタイミングを待っていましたが、ようやく公開できました。お客様の反応を楽しみにしております。
菊田: 導入前と比べて、社内に変化はありましたか?
大村さん: 数値ではまだ語れないのですが、まず、AIの力に皆が驚いたと思います。食のプロもいて、さまざまな観点でレシピを見ているのですが、その中でもかなり良い提案をしてくれます。しかも、一人ひとりに寄り添ったレシピです。今の体調不良や、「ダイエット中です」「気分が浮かないんです」といったことを入力しておくと、それに合わせたものが出てきます。面白いという感覚を皆が持ったと思います。それをどう使うかについて、少しずつ皆の中で化学変化が起きていると感じています。
菊田: 当初の想定と比べて、いかがでしたか?
大村さん: まったく違いました。想定を超えていると思いましたね。もっと機械的なものをイメージしていたのですが、意外にも人間味のある回答が返ってきます。
菊田: 想定を100点とすると、何点ぐらいでしょうか?
大村さん: 150点くらいでしょうか。思った以上でした。
菊田: 打ち合わせでは、本題から少しずれた話も多かったと思います。
大村さん: ずれているとは思っていませんでした。僕らからも本題とずれた話をどんどん出しますし、探索領域についてはたくさん話したほうがいいと考えています。こうした領域でなければ、世の中に新しいものを出しにくいと思っているからです。そういう話がしやすい雰囲気もありましたね。
店舗やSNSでの活用へ。ギフトにレシピを添えて、贈る人ともらう人の橋渡しを
菊田: 開発後の運用は、どなたが担っていますか?
大村さん: IT責任者が中心です。これまではリーダー層だけで企画開発をしてきましたが、これからはブランドのチームにしっかり浸透させて、店舗やSNSなど、川下で活用していくフェーズに入りました。
菊田: 今後、拡張したい機能や展望はありますか?
大村さん: まずはギフトの文脈です。最近は調味料をギフトに贈る方が増えてきました。普段使用している人は「こんなに使い勝手が良いのに」と思いながらも、贈るときには「このような少し難しいかも知れない調味料を贈って大丈夫かな」「この分量を使いきれるだろうか」と不安がよぎると思います。そこにレシピがついていれば、贈る側も受け取る側も安心できるのではないかと思っています。
お気に入り登録の機能も実装していただいたので、どのレシピが愛されているかを僕らも把握できれば、店舗のお客様に人気のレシピを共有するだけでも面白いと思います。料理には、共感の輪のようなものがあると思っています。皆で話し合えるような、健康や美食への配慮が広がればと思っています。
菊田: レシピの対象を広げる構想もあるのでしょうか?
大村さん: 調味料はもちろん、ドリンクもさまざまなレシピが考えられます。スイーツやジャムも同様で、実は今、海外向けのレシピ作りを進めています。スパイスを加える、チャイ風にするなど、さまざまな可能性があると思います。カフェでの展開も考えられますし、海外の方はまた違った捉え方をされると思うので、そこまで広げていけたらいいですね。
お勧めしたい企業:コクリエーションを求めている会社へ
菊田: 他社にLeapWellを薦めるとしたら、どんな会社に薦めたいですか?
大村さん: AIには本当にさまざまな可能性があると思っています。ある一つの角度からの問題解決もありますが、クリエイティブな解決が求められる場面も多いと思います。そのときに四角四面な進め方では、なかなか難しいでしょう。これからは、業界や産業をまたぐような案件も増えてくると思います。そういう難しい案件をLeapWellさんが望まれているかはわかりませんが(笑)、そうした企業があればぜひご紹介したいです。
菊田: 何を作りたいか、課題だけ見えていて解決法がわかっていない、といったものでしょうか?
大村さん: はい。課題も解決のソリューションも存在するものの、ぼんやりしている問題とそれをどうつなぐか、という問題整理の部分もあると思います。一つは、壁打ちの相手になってもらうこと。もう一つは、技術的な制約も把握したうえで、テクノロジーの特性を活かした提案をしてもらえることです。社内にエンジニアがいる企業でなければ、自社だけで解決するのは難しいと思います。
菊田: 今は非エンジニアでも開発できる流れもありますが、それを踏まえてもでしょうか?
大村さん: プロフェッショナルの目線で、最終的な信頼性や、自分たちの品質を担保するところは、とても大事だと思っています。自社だけで開発することには不安もあります。それに、面白い仕事というのは、自分たちに見えているゴールを超えていくようなものだと思います。そうした仕事には、やはりコクリエーションが必要ではないでしょうか。
菊田: 一緒に取り組みやすいのは、どんな企業だと思いますか?
大村さん: 社会課題に向き合っている企業様とは、一緒に取り組みやすいと思っています。社会課題は難易度が高いぶん、力を合わせやすい面があります。解決済みの利権を奪い合う構造ではありません。ただし、それは、それぞれの会社に「このポジションだけは絶対に負けないぞ」という強みがあって初めて実現できることだと思います。
僕らの強みは消費者理解です。お客様のことであれば、チームの中で一番よく知っています。お客様が使い続け、購入し続ける状態を解像度高く理解しているメンバーが常にいる状態を、僕らは作らなければならないと思っています。その強みがあるからこそ、技術力という別の強みを持つLeapWellさんと共創できたのだと思います。
菊田: LeapWellは、どんな会社だと感じていますか?
大村さん: 会社全体の輪郭まではわかっていないので、菊田さんや、私がお会いした方々の印象ですが、未来に成し遂げたいことが大きい、あるいは広いと感じています。お金で解決できることではなく、その先に何ができるのか、という視点をお持ちです。皆さん自身も成長されているので、また違うコラボレーションができそうだと感じさせる力があると思います。

菊田: 本日はお話しいただき、ありがとうございました!
大村さん: ありがとうございました!
企業様紹介
株式会社コラゾン様
https://www.corazon.jp
株式会社コラゾン公式プレスリリース:「今日の自分」に、今日の麹を。MURO、AI×精密栄養のレシピサービスを開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000022992.html
麹専門店MURO 公式オンラインストア
https://kojidrink.jp/

